手書き文字をパソコンに取り込んで使う3つの方法

手書き文字をパソコンに取り込んで使う3つの方法 Illustrator
手書き文字をデータ化

手書きの筆文字を書いてみたけど、きれいにパソコンに取り込むにはどうしたらいいんだろう?
画像で配置したけど、イラレのデータには変換できないのかな?

色も簡単に変更できたらいいのに……。

使用したソフト&バージョン
  • OS Windows 10
  • EPSON Scan 4.0.2
  • Adobe Photoshop 2021
  • Adobe Illustrator 2021

スキャナーで取り込んだ文字画像をそのまま使う方法

1. スキャナーでパソコンに画像を取り込む

スキャナー取り込み
※ここではEPSON Scanを使って取り込みます。(使用機種:EP-978A3)

① イメージタイプ:モノクロ/解像度1200dpiに設定します。
※Photoshopで濃度などいろいろ調整したい方は、「8bit グレー」に変更してください。グレースケールでスキャンされます。

② スキャンボタンをクリックします。

保存ファイルの設定で保存形式をTIFFに変更します。

黒1色(K1c/スミ1c)の画像について

黒1色の画像にはグレースケール画像モノクロ2階調画像の2種類の形式があります。

◎グレースケール
白から黒の濃淡(明るさ)で表現するので、濃淡のある精細なイラストや写真、水彩文字などに向いています。
推奨解像度:350dpi~600dpi

◎モノクロ2階調
100%の完全な黒と0%の完全な白で表現するのでクッキリとした見た目になります。はっきりした濃淡のない文字や線画イラストに向いています。
推奨解像度:600dpi~1200dpi

2. Photoshopでゴミ(不必要な点や汚れ)を取る

Photoshopでのゴミ取り
※Photoshop2021で作業しています。

スキャンしたモノクロ2階調画像をPhotoshopで開くと、黒い点などのゴミが周りに落ちていると思います(上記画像の赤丸参照)。その不必要な点や汚れなどのゴミを選択ツール(なげなわツール等)を駆使して囲み、削除してキレイにしていきます。
※もし「グレースケール」など「モノクロ2階調/TIFF形式」になっていない場合は「イメージ」→「モード」で「モノクロ2階調」に変換し、TIFF形式で別名保存して変換します。

ゴミを取ってキレイになったら、上書き保存して完成です。

3. Illustratorに画像を配置する

Illustrator:画像配置
※Illustrator2021で作業しています。

メニューバーの「ファイル」から「配置」を選択します。

画像ファイル選択

そして、先ほどのゴミ取り済みの画像ファイルを選択し、「配置」をクリックします。

画像の色変更

これでIllustratorに配置できましたので、チラシやポスターなどの作成データに配置して制作していきます。

また、モノクロ2階調のTIFFやPSD形式の画像はIllustrator上で色を変更することができますので、スウォッチパネル等でお好きな色に変更しても使えます

これで画像として使う分には完成となるのですが、拡大・縮小をしたり、Illustrator上で取り扱いがしやすいようにパスに変換する作業も下記で解説していきます。

Illustratorに配置した文字画像をトレースして使う方法

画像化したものをIllustratorに配置します。
※配置の仕方は上記「スキャナーで取り込んだ文字画像をそのまま使う方法」3. Illustratorに配置するでご確認ください。

1. Illustratorで画像トレースをする

Illustrator:画像トレース

メニューバーの「ウィンドウ」「画像トレース」と選択し、画像トレースパネルを表示させます。

※メニューバー下のコントロールパネルにも画像トレースボタンがあり、それをクリックしてもトレースできますが、詳細設定ができないので「画像トレースパネル」から詳細設定をしていきます。

画像トレース詳細パネル

② 画像トレースパネルが表示されると、「詳細」のところの矢印が閉じていますので、▶をクリックして開きます

すると矢印が▼になり、いくつか項目が増えます。その中の「パス・コーナー・ノイズ」の3つの数値を変更して、配置画像とパス化されたときの見た目を近づけていきます。数値は下記を参考に見た目が崩れないように調整してみてください。

画像トレースパネルの詳細について

パス
大きい値ほど精密になりますが、アンカーポイント数が増えます。

コーナー
体感では値が大きいほど角張って、小さくなるほど丸みを帯びるようなので程よくなるように調整が必要です。

ノイズ
値が大きいと細かいかすれは無くなってしまうので、筆文字などのかすれを表現するときは、小さい値のほうが良いです。

参考:Adobe「画像トレース」
https://helpx.adobe.com/jp/illustrator/using/image-trace.html

④「ホワイトを無視」にチェックを入れます。
※ここをチェックしていないと背景の白も一緒にトレースされてしまいます。

⑤「プレビュー」にチェックを入れるか「トレース」をクリックするとトレースされます。

プレビュー時に「この大きさの画像にトレースを実行すると、時間がかかる可能性があります。続行しますか?」と出ることがありますが、気にせず「OK」をクリックしてください。
※パソコンの性能にもよりますが、もしかなり時間がかかってどうしようもない場合は中断して、画像の解像度を「1200dpi」から「600dpi」に変更して再度トレースしてみてください。

Illustrator:パスに変換

コントロールパネル「拡張」をクリックし、パスに変換します。

画面上の見た目ではパス化されているように見えますが、データ上はまだ画像のままですので、拡張して完全にパスに変換します。これでIllustratorのパス化はひとまず完成です。

MEMO

小さくスキャンした文字や線画イラストなどはこのままでも大丈夫ですが、上記画像の文字のように、かすれの多い筆文字などはアンカーポイントが多くデータが重くなるため、パスの単純化の処理が必要になる場合が出てきます。

※画像トレースの詳細「パス・コーナー・ノイズ」の数値の調整で、もっとアンカーポイントを減らすことができ、見た目に影響が出なければそのままデータを使うこともできるのですが、私はこの調整が苦手なので、ここでは再現性を重視してパス化して、この後の「パスの単純化」でアンカーポイントを減らす作業をするようにしています。それでは、下記で補足していきます。

2. パスの単純化でアンカーポイントを少なくする

Illustrator:パスの単純化

パス化された文字を選択した状態で「オブジェクト」→「パス」→「単純化」を選択します。

Illustrator:単純化の詳細オプション

小さめのバーが出てきますので、一番右にある「詳細オプション」をクリックします。

左にあるスライダーでも簡易的に単純化はできますが、詳細に設定する場合は「詳細オプション」で細かく数値を指定してください。
※スライダーを左に寄せるほど単純化されます。

Illustrator:単純化パネル詳細

⑩「単純化」のダイアログから詳細を入力していきます。

ここでは、「アンカーポイントの削減」「曲線の単純化:90%」「コーナーポイント角度のしきい値:100°」に設定しました。「変更前:7742点 → 変更後:5574点」になり、見た目をほとんど変えずにアンカーポイントを減らしました。

※少しくらい見た目変わってもいいからもっと軽くしたいという方は曲線の単純化の%をもっと少なくしてもいいと思います。アンカーポイント数も減らすことができます。少しずつ触りながら調整して、最適な数値を見つけてください。

パスの単純化のアンカーポイントの削減について

曲線の単純化
%が大きい値ほど精密になり、アンカーポイントが増えます。小さくするとアンカーポイントが少なくなり滑らかになり、ポイント数も減りますが、やりすぎると見た目も変わっていきます。

コーナーポイント角度のしきい値
値が大きいほどシャープに、小さいほど角が取れて丸くなる感じで、アンカーポイントも減ります。

参考:Adobe「パスの単純化」
https://helpx.adobe.com/jp/illustrator/using/simplify_paths.html

配置画像とイラレパスデータの見比べ

これでIllustratorで自由に使える最適化された筆文字データの出来上がりです!
お好きなサイズに調整したり、色も変更したりと自由に使えます

上記画像で「画像を配置したもの」と「イラレのパスに変換したもの」を見比べても、それほど大差なく仕上がっていると思います。

Photoshopで文字画像からIllustrator用のパスを書き出す方法

1. Photoshopで開いてモードを変換

まずは、適切に処理されたモノクロ2階調または、グレースケールの文字画像を用意し、Photoshopで開きます。
※処理の仕方は上記「スキャナーで取り込んだ文字画像をそのまま使う方法」を参考にしてください。

Photoshop:グレースケール変換

①「イメージ」→「モード」→「グレースケール」と選択し、画像モードを「モノクロ2階調」から「グレースケール」に変換します。
※この作業は最初からグレースケール画像を使う場合は不要です。モノクロ2階調の画像では選択範囲が作れないため、グレースケールに変換して選択範囲を作ります。

「グレースケール」を選択すると「グレースケール」のダイアログが表示されるので、「サイズ比:1」で「OK」をクリックします。これでそのままのサイズでグレースケールに変換されました。

サイズ比とは?

画像の拡大・縮小率のことで、モノクロ2階調の画像をグレースケールに変換するときに表示されます。サイズ比は「1」でそのままの大きさになります。(通常は最初から「1」になっているのでそのままで大丈夫です。)
サイズ比を「2」にすると、半分(50%)に縮小されてグレースケールに変換されます。

2. 選択範囲を作成してIllustratorのパスとして書き出す

Photoshop:色域指定

③「選択範囲」→「色域指定」を選択します。

「色域指定」のダイアログが出てきますので、「選択:シャドウ」にし、プレビューで確認してから「OK」をクリックします。
※プレビューで白くなっている部分が選択範囲になりますので、ここで簡易的に確認して「OK」してから、拡大して細かいところまで選択範囲ができているかよく確認しましょう。

Photoshop:作業用パスの作成

⑤「ウィンドウ」→「パス」を選択して、「パスパネル」を表示させます。

「パスパネル」の右上にある「詳細オプション」をクリックして、「作業用パスを作成」を選択します。

ダイアログが出てきたら、「許容値:0.5pixel」で「OK」すると作業用パスができますので、パスパネルに表示されているか確認してください。
※許容値は低いほどパスの精度が高くなります。また、0.5pixelが最小値になります。

Illustratorへのパス書き出し

⑧「ファイル」→「書き出し」→「Illustratorへのパス書き出し」を選択します。

⑨「ファイルにパスを出力」が出てきますので、「パス:作業用パス」を選択して「OK」をクリックすると、aiファイル(Illustratorファイル)でパスが書き出されます
※ファイル名は画像のファイル名と同じ名前のaiファイルで書き出されます。

3. 書き出したaiファイルをIllustratorで開いてパスに色をつける

Illustratorで開いて色をつける

書き出されたaiファイルをIllustratorで開きます。

⑪「アートボードに変換」というダイアログが出ますが、特にそのままで問題ありませんので「OK」します。

⑫「選択」→「すべてを選択」でパスを選択します。または、選択ツールで囲んでもいいです。

「スウォッチパネル」等で色を黒、もしくは目的の色に変更します。

この時点では門構えの部分が潰れてしまっていますので、修正していきます。

Illustrator:複合パスの作成

そのまま選択した状態で「オブジェクト」→「複合パス」→「作成」複合パスにします。すると、潰れていた部分が抜けてきれいな門構えに仕上がりました。

複合パスとは?

複合パスにすると、中が抜けるようになります。例えば、黒丸の上に小さい黒丸をコピーして置き、2つを選択して複合パスにすると、ドーナツ状に中が空洞になった状態のオブジェクトが出来上がります。

4. パスを単純化してデータを軽くする

この作業は上記「Illustratorに配置した文字画像をトレースして使う方法」の「2. パスの単純化でアンカーポイントを少なくする」で説明していますので、簡単にやり方だけを表記するようにします。

Illustrator:パスの単純化

⑮「オブジェクト」→「パス」→「単純化」を選択します。

Illustrator:単純化の詳細オプション

パネルの右端の「詳細オプション」をクリックします。
※精度をあまり気にしない方は、左のバーをスライドさせて簡易的に調整しても大丈夫です。

Illustrator:単純化パネル詳細

⑰「単純化パネル」の「アンカーポイントを削減」で調整していきます。ここでは、「曲線の単純化:95%」「コーナーポイント角度のしきい値:88°」にしました。この上の画像と比べてみると分かりますが、アンカーポイントの数が減り、角も取れて丸くなったと思います。

「アンカーポイントの削減」の下の「変更前:12438点 変更後:5652点」の数値でもかなりポイント数が減って軽くなりました。

パスの書き出し完成

これで完成となります。お疲れさまでした!

まとめ

「手書き文字をパソコンに取り込んで使う3つの方法」を書きましたが、最後の「Photoshopで文字画像からIllustrator用のパスを書き出す方法」は以前の古いバージョンでやっていた方法で、工程も多いですし、今ではあまり使いません。Illustratorに「オートトレース」や「画像トレース」の機能が搭載される前はこの方法でやっていました。

私は、スキャナーでグレースケール画像として取り込み、Photoshopでゴミ取りや調整をしたうえで、モノクロ2階調に変換したものをIllustratorに配置し、画像トレースして使うことが多いです。

やはり、Illustratorのデータとして扱う方が使い勝手がいいですからね。
ただ、原寸でそのまま使うときは、モノクロ2階調の画像の方が画質はきれいですので、使い分けが必要となります。